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2018/11/01 10:31
▼ はじめに、なぜこのアイテムを紹介する理由を教えてください。
最近流行りのグルテンフリー。小麦タンパク質の一部であるグルテニンとグリアジンが結びつくことで形成されるのがグルテンです。このグルテンが体に様々な悪さをしていることから「グルテンをフリー(摂取しないよう)に」というブームが起きています。
グルテンフリーを推奨する方々がバイブルのように引き合いに出す本が「小麦は食べるな!」。
まるで全ての小麦を食べないようにしたほうが良いという恐ろしいタイトルになっていますが、よくよく中身を読んでいくと、一部の小麦を対象にしていることがわかります。
そして、その対象外の小麦こそ本文中では文字として起こされていませんが、通称「古代小麦」と呼ばれる小麦です。
古代小麦は海外(特にアメリカ、イタリア)を中心に、「実体験ベース」で広がりを見せている小麦の種類です。
どうしても小麦を食べたい方、調理で小麦を使いたい方にとっては朗報な食材が古代小麦です。
実は、古代小麦にも種類があります。その中で、小麦の原種、すなわち、最古の古代小麦と呼ばれるものがアインコーン(一粒小麦)にあたります。
アインコーン(一粒小麦)の特徴は、グルテンフリーの観点から考えますと、消化がよいことにつきます。なぜならば、グルテンの問題は腸内での消化の難易に関係してくるからです。
現代のパン小麦を食べ、お腹が張る、詰まった感じがする等の感覚を覚えたことはありませんか?
アインコーンはそうした感覚とは無縁かもしれません。普通小麦は食べられないが、アインコーンなら食べられたという方が実体験ベースで増えています。その理由は主に3つありそうです。
①デンプンの構造が違う
デンプンにはアミロースとアミロペクチンの2種類があります。アミロースはブドウ糖が直鎖状につながっている、α-アミラーゼによる分解が遅く、血糖値が上がりにくい分子構造をしています。一方、アミロペクチンはブドウ糖が枝分かれするようにできているため、α-アミラーゼによる分解が早い、血糖値が上がりやすい分子構造となっています。
アインコーン粒内のデンプンの構造は現代小麦と比べ非常に小さく、コンパクトにまとまっています。そのため、アミロースがアミロペクチンよりもさらにゆっくり消化され、食後のブドウ糖とインシュリン値を下げ、満腹感を持続させます。
また、アミロース自体も他の穀類と比べ少ないことも消化の良さに起因しています。エンマーよりも10%、ライ麦よりも20%もアミロースが少ないという研究結果も出ています。
染色体の数もアインコーンが14であることに比べ、パン小麦は42です。染色体の数が増えたことで、粒自体も大きくなりました。結果として、アミロースとアミロペクチンも増えたことになります。現代小麦は75%がアミロペクチンと言われています。
②たんぱく質の構造が違う
そもそもグルテンは80種類以上あるとされる小麦タンパク質のうち2つ(グルテニンとグリアジン)から構成されています。その中でグリアジンは大方の小麦アレルギーの原因となっています。アインコーンはグルテニンよりもグリアジンの比率が多いにも関わらず、その影響が少ないのです。その理由は、豊富なアミノ酸構成にあるようです。
こちらでも触れた通り、現代小麦は二つのエギロプス属との交配によりDゲノムのグルテンを獲得しました。このDゲノムがグルテン不耐性の原因となっています。アインコーンにはAゲノムしか存在していません。
実際に粉に触れてみるとその違いは明らかです。現代小麦は粘力があり、しっかりと膨らみますが、アインコーンはそうはいきません。長くこねる必要もなく、シンプルにすぐに焼成プロセスに進めます。
注意すべき点としては、アインコーンにも確かにグルテンが含まれているため、セリアック病の方が食べても大丈夫かどうかは科学的に証明はされていません。必ず医者に確認をすべきです。
③水溶性タンパク質が豊富
アインコーン小麦粉を扱うと分かりますが、現代小麦と比べ水分をそれほど必要としないことに気づきます。粉内のでんぷんが液体を先ず吸い込んだ後に、タンパク質が水分を吸収します。アインコーンのタンパク質構造は、水溶性タンパク質(グリアジン)の方が非水溶性タンパク質(グルテニン)よりも多い(2:1の比率)ことを示しています。一方、現代小麦などはその比率が0.8:1です。非水溶性タンパク質を消化するのは難しいため、アインコーンはより消化のしやすい小麦と言えます。
また、もし小麦由来の消化に悩んでいるならば、消化を促す方法として、1)天然酵母を使う、2)発芽した粒を使う、3)浸水させた粒を使う、の3つを試すとよいでしょう。
▼ このアイテムのおすすめポイントは何ですか?(使い方の具体例やディテールなど)
このアインコーンで作ったパンの一つが今回ご紹介する「アインコーン カンパーニュ」です。
おすすめポイントは、何といっても小麦本来の味と香りが楽しめることでしょう。シンプルな食材を使うことで、小麦本来の味を引き出しています。
一般に売られている食パンや普通小麦のパンと食べ比べると、穀物本来のにじみ出てくる甘みを感じることができます。
食べ方は様々ですが、オリーブオイルをつけて、まずはシンプルに食べて頂くことをお勧めします。
▼ このアイテムをどんな人にどんなふうに使って欲しいか教えてください。
アインコーンに限らず、古代小麦が海外を中心に広がっている理由は、実体験として、小麦を食べられなかった方が食べれた、という感想、体験談が上がっているからです。
想像してください。生まれてきた我が子が小麦アレルギーとなりました。セリアック病はその最も重症な症例です。その子は一生小麦を食べられずに残りの人生を生きていかなければならないことになります。
ほかの子供は小麦アレルギーにならず、なぜ我が子だけがアレルギーになったのか、両親は考えるでしょう。子供は両親の遺伝子を受け継いでいます。両親の体が過剰に小麦を摂取しすぎた結果、それが子供に遺伝している可能性もあります。
そのような、子供が食べられる小麦があるとしたらどうしますか?
▼ 最後に結びの言葉をお願いします。
アインコーンは全ての小麦の原種、すなわちご先祖様です。
私たちの誰もがご先祖様が誰一人かけてもこの世に存在できないように、アインコーンがいなければ今食べている小麦を味わうことができません。
全ての小麦の原種アインコーンを食べることで、今こうして生きていることに対して、ご先祖様に感謝する心が芽生えてくるでしょう。
小麦本来の味を味わっていただければと思います。